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粗大運動と微細運動のつながり(発達について)

粗大運動と微細運動のつながり

子どもの発達を考えるとき、「粗大運動」と「微細運動」という言葉を耳にすることがあります。粗大運動とは、からだ全体を使う大きな動きのことです。歩く、走る、ジャンプする、ボールを投げる、バランスをとって立つといった動作が代表的です。一方、微細運動は手や指を中心とした細かい動きのこと。鉛筆で字を書く、ハサミを使う、積み木を積む、ボタンをとめる、お箸を持つなどが当てはまります。

障害福祉の現場では、時折「不器用だから作業ができるか心配」と、将来の進路や就労を心配されるご家族の声を耳にします。

前述からすると微細運動に課題があるように見え、指先の訓練などに注目されることが多いかもしれません。しかし、実は粗大運動と微細運動は別々の力ではなく、体の軸を通して一つにつながっているのです。特に「体幹の安定」がその土台になっており、粗大運動に課題が隠されているケースも案外多かったりします。

体の軸が安定しないとどうなる?

私たちは手先を動かすとき、無意識のうちに体を安定させています。たとえば鉛筆で字を書くとき、背中やお腹の筋肉が姿勢を支え、必要な部分だけを細かく動かしています。

体の力を意識的に抜いて姿勢を曲げた状態で字を書いてみるとわかるかもしれませんが、上手に描くことが出来ません。

体幹が弱く軸が安定していない場合、椅子に座っているだけでもぐらつきが生じます。結果として、鉛筆を持つ手が不安定になり、字を書くことが難しくなるのです。

ハサミを使うときも同じです。体が安定していなければ、切る動作に合わせて体全体が動いてしまい、狙った場所をうまく切れません。周りから見ると「手先が不器用」と思われがちですが、背景には体幹やバランスの問題が潜んでいることも多いのです。

粗大運動が育む「座る力」と「集中力」

粗大運動は、大きな動きの中で筋肉や関節をしっかり使い、体を支える力を育てます。ジャンプや走る、バランス遊びを繰り返すことで、体の真ん中に一本のしっかりした柱ができます。この柱が整うと、椅子に安定して座れるようになり、余計な体の動きに気を取られずに手先に集中できるようになります。

「じっと座っていられない」「姿勢が崩れやすい」といった課題も、手先や集中力の問題ではなく、粗大運動の経験不足が関わっていることがあります。つまり、体の土台がしっかりすれば、微細運動もスムーズになるのです。

体はすべてつながっている

具体的には、次のようなつながりがあります。

  • ジャンプやバランス遊びで体幹が安定する → 椅子にしっかり座れる → 鉛筆で文字が書きやすくなる

  • 登ったり走ったりして全身を動かす → 手や指の筋肉もスムーズに使える → ハサミやお箸の操作がしやすくなる

  • リズムに合わせて体を動かす → 動きの切り替えが育つ → 書字や作業のペースも一定になる

家を建てるときに土台がしっかりしていなければ、どんなに立派な家具を置いても安定しないのと同じで、体幹は“体の土台”と言えます。粗大運動で体の土台を整えることが、微細運動をスムーズに行うための近道なのです。

将来の生活や就労につながる力

このような体のつながりは、将来の生活や就労の場面でも大きな意味を持ちます。

  • 作業所での活動:椅子に座って一定時間作業するには、体幹の安定が必要です。

  • 細かい作業:袋詰め、シール貼り、仕分けなどの仕事も、手先を動かすと同時に体を安定させる力が求められます。

  • 安全な移動:体幹が弱いと転びやすく、作業や移動の場面で事故につながることもあります。

  • 集中力と持続力:姿勢が安定すると余計なエネルギーを使わずに済み、作業に集中できます。

「体幹の安定=粗大運動の力」は、単にスポーツができるかどうかではなく、「働く力」「生活する力」に直結するのです。

日常でできる工夫

粗大運動と微細運動をつなげるために、日常生活で取り入れやすい活動もあります。

  • 布団やマットの上でのジャンプ遊び

  • 手押し車やバランス遊び

  • ボール投げやキャッチで体と手を同時に使う

  • 工作や料理で「体を支えながら手先を使う」経験

こうした遊びや活動は、見た目は楽しみの時間ですが、実は「将来の働く力」につながる発達学習になっています。

まとめ

粗大運動と微細運動は別々の力ではなく、体の軸を通して一つにつながっています。体の安定がなければ椅子に座って作業することも難しく、「不器用」と言われる手先の課題にもつながります。だからこそ、手先の練習だけに注目するのではなく、体全体を使う遊びや運動を大切にすることが必要です。

日々の小さな積み重ねが、未来の生活や就労で生きる力の土台となります。遊びを通して体幹を育て、手先の力も一緒に伸ばしていくことが、子どもにとっての自信や挑戦の力につながるのです。

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