「一人遊び」から「協働遊び」へ
児童発達支援事業所や放課後等デイサービスでは、子どもの成長を支えるために「5領域」を大切にした療育が求められています。その中の一つが「人間関係・社会性」です。これは友だちや大人との関わりを通じて、相手を意識したり、協力し合ったりする力を育てる領域です。その発達の様子は、子どもたちの「遊び」にとてもよく表れています。
遊びの発達にはいくつかの段階があります。大きく分けると 一人遊び → 並行遊び → 共同遊び → 協働遊び という流れをたどることが多いとされます。それぞれの段階には、子どもなりの大切な学びが詰まっています。
まず、一人遊びとは、お気に入りのおもちゃを手に取って夢中になったり、積み木を繰り返し積んで崩したりと、自分のペースで楽しむ姿が見られます。大人から見ると「一人で遊んでいるだけ」に見えるかもしれませんが、この時期には「集中して取り組む力」や「自分で考えて工夫する力」が育っているため、とても大切にしたい時期です。
次の段階が「並行遊び」です。これは、同じ空間にいながら、別々の遊びをしている姿を指します。例えば、二人が隣同士でブロックを積んでいても、お互いに協力しているわけではなく、自分の遊びを進めています。ただし、この「隣で同じことをしている」経験はとても重要です。まだ言葉や役割のやりとりはなくても、相手の存在を意識し始めているからです。友だちが使っているおもちゃに興味を持つ、同じ動きを真似してみる、といった関わりの芽が生まれます。
並行遊びから少しずつ関わりが増えると「共同遊び」に発展します。ここでは「同じことを一緒にやっている」という楽しさが見られます。砂場で一緒に山を作る、同じ電車の線路をつなげて遊ぶ、シャボン玉を一緒に追いかける、といった姿が代表的です。まだ明確なルールや役割分担はありませんが、「一緒にいる」「一緒に遊ぶ」心地よさを味わう大切な段階です。この頃になると「貸して」「いいよ」といったやりとりが始まり、初めての“社会的な関わり”が生まれます。
さらに発達が進むと「協働遊び」へと移行します。ここでは共通の目的やルールが生まれ、役割を分担して遊ぶ姿が見られます。「ごっこ遊び」でお店屋さんとお客さんに分かれる、鬼ごっこで鬼と逃げる子に分かれる、サッカーのようなチームで協力する遊びなどが代表的です。協働遊びには「ルールを理解して守る力」「相手の気持ちを考える力」「協力して達成する喜び」が必要になります。子どもたちは失敗やけんかを経験しながらも、少しずつ社会で生きていく力を学んでいきます。
遊びの発達が教えてくれること
このように、子どもの遊びは一人遊びから並行遊び、共同遊び、そして協働遊びへと段階的に発展していきます。
どの段階にも大切な意味があり、単に「一人で遊んでいるから心配」「ルールが守れないからダメ」というものではありません。
遊びを通して子どもたちは少しずつ他者を意識し、関わり方を学んでいくのです。
私たちの事業所でも、この遊びの広がりを支援の大切な柱としています。
子どもたちが安心して一人遊びを楽しめる環境を整え、隣に友だちがいる心地よさを味わい、やがて協力しながら遊べるように、丁寧にサポートしていきます。
遊びの中には子どもの発達を支える宝物がたくさん詰まっています。
これからも、一人ひとりが安心して挑戦できる場を整え、子どもたちが「人と関わる力」を楽しく育んでいけるよう、私たちは取り組んでいきます。